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【特集】農業をテーマに地域の次世代人材を育成するプログラム「浜松ジュニアビレッジ」・1

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静岡県浜松市

浜松市では、2019年から子供たちが「栽培・商品開発・販売」といった農業ビジネスに挑戦し、地域の大人と協力しながら、地域課題の解決に取り組む人材育成プログラム「浜松ジュニアビレッジ」を開講しています。今月の特集では、浜松ジュニアビレッジの活動内容などをお伝えします。

◎浜松ジュニアビレッジの活動内容は、こちらから
https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/nousei/hamamatsujv-katsudohokoku.html
【市HP】「浜松ジュニアビレッジ」で検索

■減少傾向にある農家数
自然環境が豊かで、全国で2番目の市域を有する浜松市は、170品目を超える農作物を生産しており、2020(令和2)年の農業産出額は、全国7位、総農家数については全国1位と指折りの農業都市です。また、温暖な気候を生かして、通常より早めに収穫・出荷する「促成栽培」を全国で初めて取り入れるなど、農業の可能性を広げてきた先進地でもあります。
高い経営意欲を持って作業効率化や規模拡大により、活躍している若手農業者も増えつつあるものの、少子高齢化の影響を受け、後継者不足や収益の減少などを理由に離農する農業者の増加も相まって、農業者の減少傾向に歯止めがかからない状況です。
2000(平成12)年に、およそ1万6千戸あった市内の総農家数は、20年の間に、およそ1万戸にまで減少しています。

■農業の持続的発展
農業には、食料の生産供給だけでなく、命の育みや、国土の保全など多面的な機能があることから、農業の衰退は浜松市の産業振興、環境保全などにも大きな影響を与える重要な課題です。
そこで、浜松市の農業が持続的に発展していくため、2019年に農業振興ビジョンを策定し、目指すべき将来像「もうかる農業」の実現に向けて、さまざまな取り組みを始めています。
農業振興ビジョンの基本方針は【営む力・売る力・産む力・守る力・地域の力】の5つの力を強くしていくことです。この中の一つ「地域の力」では、子供たちをはじめ、市民の皆さんに浜松産の農作物の豊富さや、おいしさを実感してもらい、そのことを広く伝えていく食育・食農教育を進めています。

■地域の特産品の開発・販売に挑戦する人材育成プログラム「ジュニアビレッジ」とは…
2019(令和元)年8月、市では次世代を担う子供たちが農業を通じて、地域の人と関わり、ふれあいながら学び成長し、生き抜く力を身に付けていく人材育成プログラム「浜松ジュニアビレッジ」を開講しました。
ジュニアビレッジに参加している小・中学生は、農作物の栽培をはじめ、商品の開発や販売のプロである地域の人や企業の協力を得ながら、農業の魅力発信に取り組んでいます。また活動を通して、子供たちの農業に対する理解の深まりと農作物への愛着の育みのほか、農業の活性化につなげていくことなども期待されています。
ジュニアビレッジの最大の特徴は、農作物を栽培して収穫するだけの農業体験にとどまらないことです。大事に育てて収穫した農作物を少しでも高く買ってもらえるように、小・中学生たち自らが、付加価値を付けて売るための方法を考え、実践しています。
つまり、商品開発や販売、事業報告など、一連の会社経営「農業ビジネス」に挑戦しているのです。
開講2年目の2020(令和2)年度には、地元企業の春華堂と共同で、収穫したサツマイモを使った商品の開発に取り組み、冷凍スイーツ(カタラーナ)を商品化し、販売しました。販売までには、ターゲット層を踏まえた商品設計をはじめ、パッケージデザインの考案、販売戦略の検討、接客を学ぶ講座の受講など、ビジネスのノウハウを学びました。
開講3年目の2021(令和3)年度は、カタラーナの製造・販売を継続しながら、カタラーナが、浜松を代表するお菓子の一つに選ばれるためにはどうすればいいかなど、商品販売戦略の立案などを行いました。
そして開講4年目となる2022(令和4)年度は、12人の受講生が、カタラーナの製造・販売に加え、サツマイモを使った新たな商品開発に挑戦しました。2年ぶりの新商品の開発になりましたが、コンセプト作りや販売目標の設定、ファンの作り方やSNSの活用方法を学ぶなど、2023(令和5)年2月からの販売(予定)に向けて準備を進めています。
▽ジュニアビレッジへの産学官連携による支援体制

▽浜松ジュニアビレッジが生産した農作物と開発した商品

◇【interview】市からの委託を受け、浜松ジュニアビレッジの運営に携わっている相津さんに聞きました
・子供たちがこれからの時代を生き抜いていく力をつける
グローカルデザインスクール(株)相津悠平(あいづゆうへい)さん
私がジュニアビレッジの活動で一番大切にしているのは、目まぐるしく変化するこの時代にあっても、「自分らしく生きられる人」になってほしいということです。自分は何をやりたいのか、それを実現するためにはどうしたらいいのか、という問いを子供たちが持つことから始まるわけですが、普段の生活(学校・部活や習い事・家庭)の中では、やりたいことがわからない、見つからないというお子さんも多いと思います。
ジュニアビレッジでは、地域の中で生き生きと働く人や、地元で豊かな生き方を実践する大人たちと関わることで、子供たちの体験や経験の引き出しがたくさん作られます。また“浜松って楽しそう”、“そこに私も関わりたい”という思いも芽生えます。人と地域で未来を創るということです。
基礎学力を向上させる環境は、学校や塾をはじめ整っていますが、そこにプラスしてさまざまな「経験」を積むことで、未来を自分で選択できる子(人)になってほしいと願っています。
また、「生きることは食べること」です。食料自給率の改善や地産地消がなぜ大切なのか、土づくりから農業を実践するからこそ得られる学びがあると考えています。

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