■デジタル田園都市国家構想を考える
岸田政権の目玉中の目玉政策が「デジタル田園都市国家構想(以下「デジ田構想」)」です。最近、マスコミなどで連日のように報道されていますので、ご存じの人も多いと思います。
デジ田構想の基となった考え方は、故大平首相が提唱された「田園都市国家構想」です。1980年に発表されました。これは都市の持つ高い生産性と田園の持つ豊かな自然を融合させ、健康でゆとりのある田園都市を全国につくっていくという計画でした。この構想の目指す理想をデジタルや先端技術の力で実現していくというのがデジ田構想です。従ってデジ田構想の目的は「地方と都市の差を縮め、都市の活力と地方のゆとりの両方を享受できる国を目指す」としており、デジタル技術によって、どこにいても大都市並みの質の高い生活が可能となる「人間中心のデジタル社会」が理想的な社会像として位置づけられています。
こうした構想が打ち出された背景には、人口減少や高齢化、過疎化などによって、地方にはさまざまな課題が生じており、大都市圏との経済的・社会的な格差が深刻化しているということがあります。
デジ田構想自体は目指すべき国のあり方としてはとてもよいと思いますし、デジタルなどの先端技術は、日進月歩で進化しており、社会課題の解決には有用だとも思います。しかしデジ田構想実現のためには技術だけでは足りません。デジタル技術に加え、大胆な規制改革が必要だと考えます。
例えば、浜松市で医療過疎に直面する中山間地域の対策として「医療MaaS(マース) 」の実証実験を行いました。これは近隣に診療所などがない地域で生活する患者さんに対し、オンラインによる診療とオンラインによる服薬指導を行い、薬はドローンで患者宅まで届けるという実験です。技術的には何の問題もありませんでした。しかし、この仕組みを実用化しようとすれば、さらなるオンライン診療や服薬指導を可能とする規制緩和やドローンの運用についても大幅な規制緩和が必要です。
国もデジ田構想の実現のためには、デジタルなどの技術の実装だけでなく、規制改革が必要であることを認識しており、新たに設置されたデジタル庁の役割の中には、デジタルの普及だけでなく規制改革も位置づけられています。
今後デジ田構想が成功するためには、デジタル普及と規制緩和の両方を進めていかなければなりません。浜松市としても、現場の取り組みの中で生じた規制の壁を取り除くべく、国への提言や連携の強化を図っていきたいと思います。
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