■日本の財政が心配
日本が世界一の債務大国であることをご存じでしょうか。毎年赤字国債を発行し続けた結果、他の先進国に比べ圧倒的に累積債務が膨らみました。ここ2年はコロナ対策により、さらに財政は悪化しています。しかも他国は債務の膨張を抑えながら経済成長していますが、借金は増えても日本の成長は止まったままです。コロナが落ち着き始めるや否や、他国は次々と財政収支の黒字転換方針を発表していますが、日本は打つ手なしです。
既にさまざまな悪影響も出始めています。日本は巨額の債務を抱えているため、利払いの増加を懸念して金利を上げられません。一方、米国はインフレを抑えるため、金利を上げる方向にあります。当然世界のお金は有利なドルに向かい、円が売られ円安が進んでいます。円安になると輸入価格が上がります。これにウクライナ危機による資源高なども重なって、国内の物価が急速に上昇しています。皆さんも収入は増えないのに、物価だけがどんどん上がっていくことに不安を抱いているのではないでしょうか。
私は政治家として、絶えず国家財政の問題と向き合ってきました。きっかけは、故松下幸之助氏の教えです。今から42年前の1980年に、松下政経塾に第一期生として入塾し、直接松下氏の薫陶(くんとう)を受けましたが、当時松下氏が心配していたのが将来の財政でした。
「日本はこのままでは、21世紀(当時は1980年初頭)になる頃、多額の借金を抱え国が行き詰まる」「なぜなら日本は国が税金を集めて、それをばらまく仕組みになっている。こんなことを続けていたら、お金がいくらあっても足りんようになる」「だから松下政経塾の「経」は、国家経営の経であり、自治体経営の経だということを肝に銘じるように」こうした教えを叩き込まれました。
当時の日本は、自他ともに認める世界一の経済大国でしたから、当初私は松下氏の教えには半信半疑でした。しかし月日が進むにつれ、氏の予言した通りになっていきました。そこで2000年に国会議員になってからは、一貫して財政問題に取り組みましたが、国は巨大すぎて、一人の国会議員が解決できるような簡単な問題ではありませんでした。
その後市長に就任してからは、浜松市の財政健全化に取り組みました。市の規模であれば何とかなるものです。今や浜松市は政令指定都市の中で、最も健全な財政を達成することができました。
この間にも国の財政は、年々悪化しています。このままでは日本の将来は危ういと言わざるを得ません。気が付いたら熱湯の中にいたという「ゆでガエル現象」にならないように、国民全体が危機感を共有しなければなりません。市民の皆さまもぜひこの問題を考えてみてください。
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