〜調査結果から見る現状と課題〜
女性の社会参加は年々増えてきているにもかかわらず、日本人男性の家事参加率は先進国の中でも最低水準といわれています。
新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけとして、テレワークに向いている業種を中心に在宅勤務が推奨され、在宅時間は今後増えていくことが予想されています。
家事・育児の関わり方や分担など、自宅での過ごし方について、家族で話し合ってみませんか。
◆家事・育児の男女比較
「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という性別役割分担意識に基づく暮らし方が一般的だと考える時代がありました。しかし、この意識は時代とともに変わっており、今では仕事と家庭生活を両立させる考え方が広まってきています。
下の表は、共働き夫婦の1日の時間の使い方を比較したものです。
理想では仕事と家庭生活を両立させたいと考えているにもかかわらず、実態としては家事や育児の多くを女性が担っている状況に変わりがないことが分かります。
▽子供がいる共働き夫婦の1日の時間の使い方
【令和2年度男女共同参画の視点からの新型コロナウイルス感染症拡大の影響等に関する調査報告書より作成】
◆共働き世帯数の増加と女性が働くことへの意識の変化
性別役割分担意識の変化に伴い、共働き世帯も増えてきました。
1980(昭和55)年の共働き世帯数は、専業主婦世帯数のおよそ半分でしたが、1997(平成9)年以降は、共働き世帯数が専業主婦世帯数を上回るようになりました。2020(令和2)年の共働き世帯数は1240万世帯で、専業主婦世帯数571万世帯の2倍以上となっています。
女性が職業を持つことに対する意識にも変化が表れます。30年前は子供ができてもずっと職業を続ける方がよいと考える人は全体の4分の1程度でしたが、2019(令和元)年の男女共同参画社会に関する世論調査では、6割以上にまで増えています。
▽女性が職業を持つことに対する意識の変化(回答者は女性)
◆男性の育児休業取得
働く女性が増え、男性の育児参加は当たり前の時代です。
令和2年度雇用均等調査によると、2020(令和2)年の男性の育児休暇取得率は、12・7%と過去最高値を更新し、前年の7・5%から5・2%上昇しました。新型コロナウイルスの影響により、生活や家族を重視する志向が高まったことなどが上昇要因として考えられていますが、女性の取得率81・6%との差は、依然として大きく開いています。
そこで、男性と女性が共に仕事と育児などを両立できるようにするため、育児・介護休業法の改正が行われました。これにより、父親が子の出生後8週間以内に4週間までの休業の取得が可能となったり、育児休業が2回に分けて取得できるようになったりします。
▽育児・介護休業法の主な改正内容
※制度の詳細は厚生労働省のホームページなどで確認してください
■【interview】ジェンダー(社会的・文化的性差)社会学の専門家に聞きました
家事・育児に対して、もっと肩の力を抜いてみませんか?
静岡県立大学国際関係学部 犬塚協太教授
◎理想と異なる現実
1950年代から1970年代の高度成長期、女性は結婚をしたら仕事をやめて家庭に入り、妻そして母として生きていくというスタイルが定着しました。当時の家事・育児レベルは非常に高く、女性ができるだけ家事・育児に長い時間をかけることがいいことであるという考えが広がった時代です。
共働き時代に変わり、女性の家事・育児に費やす時間は大幅に短くなるはずでした。しかし、高度成長期の女性の家事・育児スタイルは今も引き継がれています。なぜなら、日本人は家事・育児になるべく手を掛けることが、家族への愛情の証だと思い込んでいる人がまだまだ多いからです。
◎周りを頼ってください
「時間貧困」という言葉があります。仕事に加え、家事・育児に追われ、自分の時間を持てない人がこれに当たります。あなたは何もかも一人で頑張ろうとしてはいませんか。全てが完璧でないといけないと思ってはいないでしょうか。
しかし、その状態が続くと心も体も疲れてしまいます。肩の力を抜き、家事や育児の手を抜いて、もっと楽に考えてみませんか。このような考えは決して悪いことではないですし、切り替えをしていかないと、自分たちの生き方を苦しめることにつながってしまいます。
近年は、地域の家事・育児サービスも充実しています。家の外の人のサポートを受けることも解決策の一つです。あなたに合う無理のない生活スタイルをぜひ見つけてください。
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