◇森の恩恵
元気な森林は土砂災害や洪水から人々を守ったり、多様な生物のすみかになったり、木が二酸化炭素を吸収することで地球温暖化の防止につながったりと、私たちに恩恵を与えてくれます。しかし、国内には手入れが行き届かず荒廃が進み、その機能が失われつつある森林もあります。
森林を守りながら、木材を生産する仕事が林業です。林業は、苗木を植える作業から始まり、何十年も手をかけて育て、伐採します。しかし、木材が使われないと木が伐採されず、林業が衰退します。
◇「使う」ことが「守る」ことにつながる
地元の森林を守るためには、生活の中で地元の木材を使うことが大切です。「植える→育てる→伐(き)る→使う」という循環で、森林は豊かになっていきます。
家や店舗を建てたり、リフォームをしたりするとき。おもちゃや家具、お皿やスプーンを買うとき。ぜひ、天竜材を選んでください!その選択が、天竜美林を守ることにつながります。
■天竜区でスギやヒノキを生産している熊平智司(くまだいらさとし)さんに、山の仕事の魅力を聞きました。
▽山の仕事を受け継ぐ
12代目で26年間、林業に携わっています。父から受け継いだ森を自分が手入れすることで、森が美しくなっていくときがうれしいです。
浜松学芸高等学校の音楽ホール(3ページ参照)で使われた木材は、父が手入れし、私が伐採した木材です。親子二代で関わった天竜材を使った施設には特別な思い入れがあります。
▽森を近くに感じてほしい
森の魅力は、春の芽吹き、夏の鳥の鳴き声などから四季を感じられることです。皆さんにも、森を近くに感じてほしいです。森に行けなくても木の小物でも十分、天竜材の香りなどを感じられると思います。ぜひ木製品を生活に取り入れてほしいです。
■製材会社を営む永田琢也さん(一般社団法人浜松地域材利用促進協議会副会長/永田木材株式会社代表取締役)と、永田友美さんに、天竜材の魅力を聞きました。
▽木材も地産地消で
浜松では慣れ親しんだ景色の中に山々があり、手の届く範囲に森があります。食べ物でもよく「地産地消」と言われるように、地元で生産された木材を、当たり前に使ってもらえたらと思います。
天竜の森は歴史があるので幅広い樹齢の木が育っています。そのため、柱や梁(はり)などの構造材、板や下地材など「こんな材料が欲しい」というさまざまな要望に応えることができます!木の個性を生かし、余すことなく使いながら、森を循環させていくことが大切だと思っています。
▽子育てで感じる木の家の魅力
寝かしつけに時間がかかっていた子供が、木の家では自ら進んで眠るようになりました。調湿効果が高く、空気がさらっとして心地よいので、ぐっすりと眠れるようです。大工さんが一生懸命に家を造る姿を見ているので、子供なりに愛着を持ち、床や柱を傷つけないよう大切に扱っています。木が私たち家族の健康を守ってくれている安心感があり、心強いです。
■information
◇住宅や事務所などの天竜材利用に補助金が出ます
市内で生産・加工された天竜材(FSC認証材)を用いて木造住宅などを建てる人に対して、天竜材の購入費用の一部を助成しています。
補助金を利用した人からは「天竜材の美しさや性能に引かれ、天竜材を使った家造りを決めました。市の補助金制度があったことも経済的な後押しになりました」「天竜材の家は、冬も夏も快適で、無垢(むく)の床は肌触りもよく、家族みんな満足しています」といった声が寄せられています。
建物の種類によって2種類の補助金制度があります。条件などの詳細は市ホームページを確認してください。
・住宅
天竜材の家 百年住居(すまい)る事業費補助金(最大50万円補助)
【市HP】「天竜材の家」で検索
https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/ringyou/shinko/forestry/ringyou/index.html
・住宅以外(事務所、店舗、家具の購入など)
天竜材ぬくもり空間創出事業費補助金(最大500万円補助)
【市HP】「ぬくもり空間」で検索
https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/ringyou/2020nukumori.html
森林整備、木材利用、人材育成などに森林環境譲与税が使われています。本年度から始まった森林環境税がその原資となり、浜松市ではこの有効活用を進めています。
◎この特集に関するお問い合わせは、林業振興課へ(【電話】457-2159)
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