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特集 重要文化財指定 博物館で特別展を開催 伊場遺跡群出土品を見に行こう(1)

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静岡県浜松市

弥生時代の集落遺跡としては市内最大級となる伊場遺跡。遺跡が発見された76年前は大きな注目を集め、発掘調査には市民や地域の学生なども参加しました。時を経て、伊場遺跡と周辺の遺跡群から出土した土器など605点が重要文化財に指定されました!
ここでは出土品の特徴を紹介し、発掘調査の歩みを振り返ります。

伊場遺跡は、一人の中学生が弥生土器片を発見したことがきっかけとなり、のちに大規模な集落遺跡であることが明らかとなりました。
そして今年度、伊場遺跡とその周辺の鳥居松遺跡や梶子遺跡などから出土した土器や木製品、ガラス製品など605点が「伊場遺跡群出土品」として重要文化財に指定されました。浜松市博物館の収蔵品では初めて、また、考古資料としても市内で初めての指定となります。出土品の中でも特徴的な4点を、このコーナーで紹介します。11月下旬から博物館で開催する特別展では、この4点を含む多くの出土品を展示しますので、ぜひお出かけください。
伊場遺跡群出土品には、細やかな文様の木製品や、他の地域から影響を受けたと考えられる土器、銅鐸や鏡を模した土製品など、当時の生活や文化を物語るものがたくさんあります。「何のために作ったのかな」「どんな人が使っていたのかな」と想像してみると、展示をより深く楽しめます。

▽重要文化財(考古資料)とは
有形文化財のうち国が重要とみなして指定するものが重要文化財です。その中で、遺跡から出土する土器や石器などの遺物が考古資料に区分されます。

■伊場遺跡群出土品(1) 木甲(もっこう)
儀礼に使われたと考えられる木製のよろい。細やかな文様が彫刻され、赤と黒に着色されている。背中側には翼のような突起がある。国内で他に例のない形や装飾をしている。(伊場遺跡出土)

▽博物館学芸員のひとこと
当時としては貴重な顔料で着色されています。他の地域で作られた木甲が伝わってきたのでは。

■伊場遺跡群出土品(2) 鰭付壺(ひれつきつぼ)
魚のひれのような装飾が縦方向に4本、横方向に1本付いていることから「鰭付壺」と呼ばれる。鰭付壺は全国でも珍しい。(伊場遺跡出土)

▽博物館学芸員のひとこと
この壺は76年前に出土したもので、長い間「伊場遺跡の土器といえばこれ!」と言われるくらいよく知られています。

■伊場遺跡群出土品(3) 装飾高坏(そうしょくたかつき)
台座の部分に木の葉形または円形の透かし穴がある伊場遺跡群の特徴的な土器。また、そうした特徴を忠実に表現したミニチュア土器も発見されている。(伊場遺跡出土)

■伊場遺跡群出土品(4) 家形土器(いえがたどき)
建物の形をした足付きの器。弥生時代に田んぼのあぜだった場所から出土した。(鳥居松遺跡出土)

▽博物館学芸員のひとこと
柱の特徴から、穀物倉庫や神殿をまねた可能性があります。例えばこの土器に種籾(たねもみ)(イネの種)を入れて豊作を祈ったのではないか、などと想像できます。

伊場遺跡は、JR浜松駅から西へおよそ2kmの位置にあります。およそ1900年前、この場所で弥生時代の人々は、温暖な気候を生かして稲作を行い、集落をつくって暮らしていました。

■弥生時代の研究者で伊場遺跡群出土品の再整理にご協力いただいた禰宜田佳男さんに、伊場遺跡の特徴を伺いました。

▽弥生社会を知る上で重要な遺跡
伊場遺跡は有名でしたので40年以上前の学生時代以来、弥生文化博物館で木甲のレプリカ作成のためなど公私にわたり訪れてきました。遺跡は弥生後期の3重の環濠集落跡ですが、首長の居宅を取り囲む事例は全国的に稀少です。今回重要文化財指定された遺物はここから出土したものです。伊場遺跡は列島の弥生社会を知る上で欠かすことのできない重要な遺跡なのです。
大阪府立弥生文化博物館
館長 禰宜田佳男(ねぎたよしお)さん

■特別展「伊場遺跡群と弥生時代後期の文化」
伊場遺跡群出土品から分かる弥生時代後期の社会や文化、地域間交流を紹介します。九州や中国地方などの各地からも、関連のある出土品がやってきます!
場所:博物館(中央区蜆塚四丁目22-1)
会期:11月22日(土)から2026(令和8)年1月18日(日)まで
・休館日…月曜日(休日の場合翌日)、12月29日〜1月3日
開館時間:9:00〜17:00
観覧料:大人800円、高校生500円、小中学生300円
未就学児、各種障害者手帳所持者とその介添者1人は無料
※常設展も観覧可

・ギャラリートークを11月22日(土)、12月28日(日)、2026(令和8)年1月18日(日)に開催(各日10:30〜11:00 ※12月28日(日)は14:00〜14:30も開催)。当日、直接会場へ。
・木甲ペーパークラフトづくりワークショップを12月28日(日)9:45〜10:20と13:15〜13:50に開催。各回10組(当日申込先着順)、費用100円(別途観覧料が必要)。
【市HP】「博物館」で検索

https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/hamahaku/

旧石器時代

縄文時代

弥生時代(およそ2800年前〜1750年前)
伊場遺跡でのできごと……集落が営まれ、水田でコメづくりが行われる

古墳時代
集落が営まれ、カマドを持つ住居がつくられる

飛鳥時代・奈良時代
敷智(ふち)郡の役所が置かれる

■伊場遺跡発見から76年の歩み
・1949(昭和24)年…土器が発見され、國學院大學が発掘調査開始
・1954(昭和29)年…県指定史跡に指定
・1964(昭和39)年ごろ…遺跡の一部が国鉄東海道線の貨物駅と留置線の移転予定地となる
・1968(昭和43)年…貨物駅と留置線用地の発掘調査開始
・1973(昭和48)年…貨物駅と留置線の移転のため県史跡指定が解除
・1974(昭和49)年…伊場遺跡公園整備開始
・1975(昭和50)年…伊場遺跡資料館が開館(現在は閉館)
・2002(平成14)年…伊場遺跡群から出土した古代の木簡・墨書(ぼくしょ)土器が県指定有形文化財となる
・2025(令和7)年…伊場遺跡群から出土した弥生時代後期の遺物が重要文化財指定

◇伊場遺跡を未来へつなぐ
伊場遺跡は埋め戻された今も地下に眠っています。市では、遺跡を後世に残していくために、現地の保存に努めるとともに、遺跡公園や出土品を活用したさまざまな取り組みで、市民の皆さんへ遺跡の価値や魅力を伝えていきます。

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