最近、耳にすることが増えた「ヤングケアラー家事や家族の介護などを日常的に行っている子供のことを指します。子供が家事の手伝いや家族の世話をすることは、成長する上で大切ことですが、ヤングケアラーとしての負担が大きくなり、学業などに支障が出るという問題も発生しています。
■ヤングケアラーとは
厚生労働省によると、ヤングケアラーの法律上の定義はないものの、一般的には、本来大人が担うとされている家事や家族の世話などを日常的に行っている子供とされています。自分より幼いきょうだいの世話をしたり、病気を患っている親の代わりに家事をしたりするなど実情はそれぞれ異なります。
▽例えばこんな子供たちです
・日本語が第一言語でない家族や障がいのある家族のために通訳をしている
・目を離せない家族の見守りや声掛けなどの気遣いをしている
・障がいや病気のあるきょうだいの世話や見守りをしている
・家族に代わり、幼いきょうだいの世話をしている
・障がいや病気のある家族に代わり、買い物・料理・掃除・洗濯などの家事をしている
・障がいや病気のある家族の入浴やトイレの介助をしている
・障がいや病気のある家族の身の回りの世話をしている
・がん・難病・精神疾患など慢性的な病気の家族の看病をしている
・アルコール・薬物・ギャンブル問題を抱える家族に対応している
・家計を支えるために労働をして、障がいや病気のある家族を助けている
※厚生労働省ホームページを参照し、作成しています
■ヤングケアラーが生まれる背景
ヤングケアラーが生まれてしまう背景には、時代とともに変化してきた家族形態が影響しています。核家族化をはじめ、共働き世帯やひとり親家庭の増加などにより、家族の身の回りの世話などを担うことができる大人がいなくなり、子供が引き受けなければならない状態となってしまいます。
また、何らかの理由により大人が働けない場合には、子供が経済的な負担を背負ってしまうことがあります。
■自覚の有無
文部科学省と厚生労働省が2021(令和3)年3月に発表したヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書によると中学年生の5・7%(およそ17人に1人)が家族の世話をしていると答えています。
しかし、ヤングケアラーと自覚している中学2年生は1・8%しかいません。ヤングケアラーにあてはまるか分からないと答えている中学年生も12・5%いることから、自分がヤングケアラーかどうか分からないまま家族の世話をしている子供も多いという現状が明らかとなっています。
また、中学年生の84・2%がヤングケアラーという言葉を聞いたことはないと答えていることから、ヤングケアラーという言葉自体の認知度が低いことも明らかとなりました。
▽ヤングケアラーの自覚(中学2年生)
▽ヤングケアラーの認知度(中学2年生)
◆元ヤングケアラーの声:市内在住Aさんの場合
今、思い返せば、助けて欲しかったんだと思いますが、誰が信用できる大人か分かりませんでした。
▽孤独感と不信感
同居の祖母がアルツハイマー型の認知症を発症し、私の介護生活が始まりました。ひとり親の父は、単身赴任中で、子供の私が主たる介護者にならざるを得ませんでした。
最初の頃は介護と学業との両立がとても大変でした。友人に相談をしましたが、できれば相談してほしくないような表情をされ、「大変だね」の一言で済まされるばかりで、孤独を感じていました。ある友人に相談した時の「別にそんなに大変そうじゃないじゃん」の一言は、今でも印象に残っています。
また、立場上仕方なかったのかもしれませんが、祖母の介護に関わる大人たちが、主たる介護者である私とではなく、父と話を進めることが多かったので、周りの大人へ不信感を抱いていました。
▽理解者の存在が救いとなった
なかなか相談しようと思えない時期が続きましたが、私の場合は、知り合った認知症の専門医が、私の気持ちや介護の苦労を理解してくれる人だったので、この人なら何かあった時に相談してもいいという安心感を得られたことが転機となりました。理解してくれる人がいることで、少しずつ気持ちを整理できるようになり、相談できるようになっていきました。少しずつでも、ヤングケアラーへの世の中の理解が進んでほしいと思います。
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