■第15話 古代の糸・布づくり
糸を紡ぐ。現在ではあまり聞きなじみのない言葉かもしれませんが、ひと昔前の農村などでは盛んに行われていました。糸を紡ぎ、布を織る。布を織り、衣服を縫う。糸や布は現在の私たちの生活には欠かすことができません。しかし、裁縫が趣味の人でも、糸を紡いだり、糸から布を織ったりするという人は多くないでしょう。
古代の人々にとって、糸や布を作ることは生活に欠かせない作業でした。そのため、市内の古代遺跡で発掘調査をすると、糸づくりの痕跡を示す遺物が見つかることがあります。
中区東伊場周辺に広がる伊場遺跡群では、紡錘車(ぼうすいしゃ)と呼ばれる穴の開いた円盤状の遺物が出土しています。いったい何に使ったのでしょうか?実はこの紡錘車、糸づくりを行う際に、とても重要な役割があるのです。古代の糸の原料は、主に植物の繊維を加工したと考えられています。糸を績(う)むためには、植物の繊維に撚(よ)りをかけて太さを均一にしていきます。その繊維を巻き取る道具を紡錘車と言い、発掘調査では回転力を上げるために取り付けられたおもりの部分が出土しています。紡錘車は弥生時代の遺跡からも出土しており、使われた素材には、土製、石製、および鉄製などがあります。
また、発掘調査で出土した文字資料からも、当時の人々と布づくりのつながりがうかがえます。伊場遺跡群からは木簡(もっかん)と呼ばれる木の板に文字を書いた資料が数多く出土しており、その中には当時の人たちが税として布を納めていたことや原料である糸の貸し借りに関する記述が見られます。
浜松市地域遺産センターでは、市内の発掘調査成果について展示などで紹介しています。ぜひお越しください。
(文:浜松市文化財課)
【市HP】「地域遺産センター」で検索
https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/bunkazai/maibun/index.html
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