■第13話 文化財の指定とは
文化財の散歩道も連載二年目に入りました。恐らく「指定文化財」という言葉にも皆さん慣れた頃かと思います。ところで、文化財を指定する、とは具体的にどんなことをするのでしょう?そしてその意義は?
今回は、文化財を市の指定にするまでの裏側をのぞいてみましょう。題して「文化財の裏道散歩」。
今年三月二十四日、新たに市の指定文化財になったのは「絹本著色南渓瑞聞像永禄十三年の自賛がある」です。
指定名称の読み方が難しいですね。「けんぽんちゃくしょくなんけいずいもんぞうえいろくじゅうさんねんのじさんがある」と読みます。掛け軸の絵画です。字からもうかがえるように、この絵には、絹地に筆と岩絵の具などを用いて着色した人物像が描かれています。描かれているのは、龍潭寺二世の僧、南渓瑞聞です。絵の上部には、墨で書かれた文字も確認できますね。これは賛というもので、永禄十三年(一五七〇)に南渓の弟子が南渓に頼んで直接書いてもらったものです。
さて、裏道に戻りましょう。指定を見据えた準備は、数年ほど前に始めます。専門家の助言をいただきながら調査候補をあげ、所有者と調整をして現物調査を行います。今回は、龍潭寺でいくつかの候補品を調べましたが、掛け軸については、床の間に絵を掛けて現物を確認しました。どのように描かれているのかを観察し、損傷の程度や修理の痕跡、書かれている文字の内容など、さまざまな生の情報を記録しました。また、大きさを計測し、収納用の箱の情報も確認しました。お寺には、伝来を伺い、関係資料も提供いただきました。これらの内容を整理したら、専門家の意見を踏まえて指定候補を決めていきます。
その後の手続きは、条例に基づいて、教育委員会の諮問機関である文化財保護審議会が審議を行い、指定にふさわしい旨の回答(答申と言います)があれば、教育委員会の議決と告示を経て正式に指定されたことになります。
過去からの贈り物を一定の基準で評価し、指定文化財とすることにより市民共通の財産として未来に引き継いでいくことができるようになるのです。(文:浜松市文化財課)
◆浜松市博物館テーマ展「新指定文化財展」
7月18日(月)まで開催。近年、国・県・市により指定された文化財を紹介します。
【市HP】「博物館」で検索
https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/hamahaku/
《近年指定された文化財の一例》
市指定有形文化財
ジェームズ・ペイトン号遭難事件関係資料(個人蔵)
2021(令和3)年3月23日指定
※詳しくは広報紙をご覧下さい
<この記事についてアンケートにご協力ください。>