• 今日24/17
  • 明日19/17
文字サイズ

【特集】郷土の偉人「金原明善」〜金原明善没後100年〜・1

2/36

静岡県浜松市

2023(令和5)年1月には、1923(大正12)年に金原明善翁が没してから100年を迎えます。明善翁は「暴れ天竜」と呼ばれた天竜川の治水をはじめ、植林事業や利水事業、北海道の開拓、さらには現在の更生保護制度の原点とされる出獄人保護事業など、近代日本の発展の礎を築いてきた郷土の偉人です。今月の特集では、明善翁の功績を振り返ります。

■治水事業
※治水とは、堤防などを築いて、洪水などの水害を防いだり、川の水を利用しやすくしたりすること
▽私財を投じて取り組んだ天竜川の治水
天竜川は鹿島橋から下流では、昔から網状に流れ「暴れ天竜」として住民に恐れられ、多くの洪水被害が発生していました。そこで明善翁は、天竜の鹿島から河口までの川幅を一定にして、堤防を作る改修工事を政府に願い出ます。しかし、国や県からの費用が思うように確保できなかったため、多くの私財を投じて治水事業に尽力しました。

■植林事業
※植林とは、伐採跡地や山林でなかった土地へ苗木を植えたり、種子をまいたりして林に育てること
▽災害を防ぐための植林
「河を治めるには、山を治めること」との信念から、天竜川の度重なる災害の根を絶ち、人々の生活の安定と産業復興のために植林事業を行いました。1887(明治20)年に磐田郡瀬尻(現在の天竜区龍山町瀬尻)の官林(現在の国有林)への植林に着手し、隣接する私有地にも植林を行いました。これにより、治山・治水・利水などの公益性と木材生産の経済性を併せ持つ天竜林業の礎が築かれました。

■利水事業
※利水とは、河川や河川に伴う遊水池などから水を引き、その水を利用すること
▽天竜川の水を農業用水に
天竜川の水を三方原台地や浜名平野に引き込み、農作物の栽培や木材の運搬などに利用するという壮大な計画を考えました。経済的、技術的な問題により実現には至りませんでしたが、この計画は1938(昭和13)年から始まった浜名用排水幹線改良事業に引き継がれました。その後、三方原用水農業水利事業により、かつて不毛の台地と呼ばれた三方原台地へ恵みの水がもたらされました。

■更生保護
※更生保護とは、犯罪者などが一般社会の一員として健全で安定した生活を送ることができるように、社会復帰と自立を助けること
▽日本で最初に出獄人の保護事業に着手
明治時代、刑を終えた人が、寝る場所もお金もないという状況に陥り、自ら命を絶つということがありました。明善翁はこの話を聞き「改心して監獄を出た者を社会の中でしっかりと保護する方法を考えなければならない」と、1888(明治21)年に出獄人の更生保護施設「静岡県出獄人保護会社」を設立し、現在の更生保護制度の原点とされる出獄人保護事業に着手しました。

◆金原明善翁の略歴
・1832(天保3)年6月
遠江国(とおとうみのくに)長上郡(ながかみぐん)安間村(現在の東区安間町)で金原久平の長男として誕生する
・1850(嘉永)年【19歳】
天竜川が各所で決壊し、甚大な洪水被害を体験する
・1868(明治元)年【37歳】
京都に上り維新政府に天竜川治水対策を建白する
・1868(明治元)年【37歳】
天竜川堤防の復旧工事を太政官から認可され、御用掛(ごようがかり)となって完工する
・1872(明治5)年【41歳】
自宅を提供して小学校を開校する
・1877(明治10)年12月【46歳】
内務卿(ないむきょう)の大久保利通に面会し、天竜川治水のために全財産の寄附を申し出て補助金の承認を得る
・1886(明治19)年【55歳】
機械製材業を始める(後の天竜木材(株))
・1887(明治20)年【56歳】
瀬尻官有林に隣接する山林1200町歩の経営に着手する
・1888(明治21)年【57歳】
静岡県出獄人保護会社を設立し、以前に刑罰を受けた人の保護事業に着手する
・1890(明治23)年【59歳】
日本治水協会を設立する
・1892(明治25)年【61歳】
天竜運輸(株)を設立する
・1900(明治33)年【69歳】
北海道に金原農場を創設する
・1904(明治37)年【73歳】
金原疎水財団(現在の金原治水治山財団)を設立する
・1907(明治40)年【76歳】
郷里である和田村の村長に就任する
・1923(大正12)年1月
永眠(92歳)
※略歴の年齢は数え年で表記しています

◆多くの人の力の結集によって築き上げられた浜松の森林
2018(平成30)年に行われた第百九十六回国会の施政方針演説において、安倍内閣総理大臣は、金原明善翁と明善翁の呼び掛けに賛同して植林のために山に移り住んだ人たちが結集して築き上げた森林が、100年たった今でも遠州平野の守り神となっている。と言及されました。

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

       

広報プラスーはままつー

MENU