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【連載】はままつ文化財の散歩道

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静岡県浜松市

■第9話 江戸時代のウミガメ供養
遠州灘に面した砂浜は、アカウミガメの産卵地として有名で「浜松海岸のアカウミガメ及びその産卵地」として市指定天然記念物に定められています。
アカウミガメは、体長一・二メートル程度まで成長する雑食性のウミガメで、遠州灘沿岸では五月から九月にかけての人けがなくなる夜に上陸し、砂浜に掘った穴にピンポン玉くらいの卵を一二〇個程度産卵します。上陸する頭数は年によって変動がありますが、毎年五〇~一〇〇頭程度が上陸し、一〇〇〇個以上の卵が孵(ふ)化しています。
乱獲や環境の変化などの影響によって個体数が減り、絶滅が危惧されているため、市内ではNPO団体による保護活動が長年行われているほか、市と企業・団体などが連携して海岸を清掃する「ウェルカメクリーン作戦」を毎年五月に開催するなどの取り組みが行われています。
それでは、浜松の人々とウミガメの関わりはいつ頃から続いているのでしょうか?
縄文時代の集落跡である国指定史跡「蜆塚(しじみづか)遺跡」(中区蜆塚四丁目)の貝塚からは、ウミガメの骨が出土しており、およそ四〇〇〇年前から、浜松に上陸していたことがうかがえます。また、江戸時代にウミガメを供養していたことを示す石塔が市内に二箇所残されています。
一つは西区坪井町の東光寺にある「南海霊亀碑(なんかいれいきひ)」です。亀をかたどった台石(だいいし)の上に、六角の石柱が載せられており、そこに刻まれている由来には「文化七年(一八一〇)初秋の夜に遠州灘が荒れ、翌朝に息絶えた亀が海岸に打ち上げられていた。村人たちは深く哀れんで亀を埋葬し碑を建てた」と記されています。
もう一つは、西区舘山寺町の県道舘山寺弁天島線沿いの道脇にある「亀塚」です。堀江村に漂着した亀を葬ったと伝えられており、石碑には文政五年(一八二二)と刻まれています。亀は古くから吉祥(きっしょう)の動物とされ、豊漁祈願の対象としても扱われていましたが、いずれの石碑からも、江戸時代の人々が亀を神聖視して大切に扱っていた様子をうかがい知ることができます。
砂浜の減退、防潮堤の建設など海岸の景観は変わりつつあります。また、海洋プラスチックごみなどの環境問題も指摘されています。自然保護に対する意識を一人一人が高め、いつまでも浜松の地にアカウミガメが訪れてくれる環境が維持できるといいですね。
(文:浜松市文化財課)

▼アカウミガメの保護についてホームページで紹介しています
【市HP】「アカウミガメ 文化財」で検索

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