■デジタルと規制緩和で課題解決
新型コロナウイルスの影響で、社会のデジタル化と規制緩和が一気に進もうとしています。コロナの渦中に誕生した菅政権では、まさにデジタルと規制緩和が大きな柱となっており、デジタル庁の設置やスーパーシティ構想を矢継ぎ早に打ち出しました。浜松市もこうした国の取り組みを活用して、社会課題の解決や地域の発展を導いていきたいと考えています。私はデジタルや規制緩和は、実は人口減少や過疎化に悩む中山間地域の課題解決にこそ役立つと考えています。
先日春野地域において、医療MaaS(マース)の実証実験を行いました。MaaSとは、 直訳すると「サービスとしての移動」という意味ですが、要は自動車などを使って新しいサービスを生み出すことを指します。春野での試みは、移動診療車に看護師さんが乗り込み患者さん宅まで出掛け、車内のタブレットで遠隔地のお医者さんとつないでオンライン診療と服薬指導を行い、薬はドローンで自宅まで届けるというものです。全国的に中山間地域においては診療所の閉鎖が相次ぎ、医療過疎になる所が増えています。こうした地域ではオンライン診療が大きな力となります。また規格が決まった医薬品はドローン配送に向いていますし、都市部のようにビルや住宅が密集していませんので、飛行の安全確保に神経質になる必要もありません。この取り組みが実用化できれば、浜松の中山間地域のみならず、全国の過疎地域にとっても大きな福音となります。オンライン診療や服薬指導、ドローン飛行の規制を緩和してもらえれば、すぐに実現できます。
水窪では、近距離移動を目的とした自動運転の実証実験を行いました。使われた自動運転車は、時速10km程度の低速で走る車で、既存の技術の組み合わせでできていて、高度な技術は使われていません。市街地を高速で自由自在に動く自動運転車は、実用化までに多くの技術的課題を克服しなければならず、時間もかかります。しかし、交通量が少ない中山間地域で、駅やバス停から自宅までといった近距離移動であれば、この車で十分です。速度も超低速ですので、たとえ事故が起こったとしても重大事故につながる可能性は低いと言えます。公共交通機関がなくなり、高齢化も進む中山間地域では、新たな「地域の足」になるとの期待が膨らみます。
こうした経験から、デジタルや規制緩和が必要なのは、都市部よりもむしろ中山間地域ではないかと思います。広大な中山間地域を抱える浜松市にとっても、地域課題の解決に「デジタルと規制緩和」は欠かすことができませんので、今後も積極的にチャレンジしてまいります。
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