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【連載】はままつ文化財の散歩道

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静岡県浜松市

■第7話 十年越しの大修理
長い時を経て守り伝えられてきた文化財を、良好な状態で後世へ伝えるために欠かせないのが「修理」です。今回は仏像の修理について紹介します。
初山宝林寺(しょさんほうりんじ)(北区細江町中川)の仏殿内には、本尊の釈迦如来坐像(しゃかにょらいざぞう)を中心に江戸時代初期に作られた二十九体の仏像(静岡県指定文化財)が安置されています。その内の二十四善神立像(にじゅうしぜんしんりゅうぞう)ほか二十六体の保存修理が、二〇一六年度から行われています。現時点での終了予定は二〇二八年、実に十年越しの大修理計画です。
修理に先立ち状態確認のための調査を行い、専門家の意見を踏まえて修理方針を立てました。文化財の修理では、作られた当時の、いわゆるピカピカの状態に戻すのではなく、現状保持を大原則とします。どの像も表面がささくれ立つなど、見るからに痛々しい状態です。直ちに修理したいところですが、当時、宝林寺では仏殿や山門などの改修も同時に控えており、負担を分散させる必要がありました。また、修理を行う美術院(国宝・重要文化財の仏像修理のほとんどを手掛ける機関)にも、一年間で二体を受け入れるのが精いっぱいという事情がありました。こうした理由から、長期にわたる修理が始まりました。現在までに八体が修理を終え、今年五月には日宮天子(にっくうてんし)菩薩立像と月宮天子(がっくうてんし)菩薩立像が、京都市内の美術院工房へと旅立ちました。
長期の修理で特に注意している点は仏像群全体の調和です。最初の方に修理した像と最後の方とで仕上がりの雰囲気が変わらないように留意しています。修理過程で部材を取り外す際に、像内納入品や墨書が見つかったりするなどの新発見もあります。それらは細かく記録され、考察されますが、全ての修理が終わった段階で総合的に検討することで、また違う発見があるものと期待しています。特に検討が待たれるのは、この仏像群の当初の立ち位置と尊名(そんめい)(仏像の名前)の解明です。過去に仏像群を仏殿の外へ移して再び戻す中で、混乱した疑いがあるからです。
修理が完成する二〇二八年が待ち遠しいですね。
(文:浜松市文化財課)

■初山宝林寺
黄檗宗(おうばくしゅう)の寺院。寛文(かんぶん)4年(1664)、明僧独湛性瑩(みんそうどくたんしょうえい)により開創(かいそう)。今回紹介した文化財の他、方丈(ほうじょう)(国重要文化財)、山門(県指定)、報恩堂(ほうおんどう)(市指定)なども。
拝観は10:00~16:00、大人400円、小人200円
【市HP】「初山宝林寺」で検索

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