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【連載】はままつ文化財の散歩道

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静岡県浜松市

■第6話 レンガ積みもお国柄
明治時代、西洋文明を積極的に取り入れた我が国では、全国で急速にレンガ造りの建造物が広がりました。殖産興業と富国強兵。市内に残るレンガ積みの遺構はこうした時代の息吹を今に伝えています。
浜松市を代表するレンガ造りの建物として、旧王子製紙製品倉庫(県指定有形文化財)が挙げられます。明治二十二年(一八八九)、天竜区春野町気田に造られた日本初の木材パルプ製紙工場跡に残る貴重な遺構です。建物には、レンガ積みの外壁と木製の内壁の間に空気の層を設けた保温性に優れた構造が採用されています。
レンガの積み方は、一見単純に見えますが、西洋の国や地域により流儀が違います。浜松に残るレンガ造りの建造物にも、こうしたお国柄がうかがえる場合がありますので、その代表例を紹介します。
北区引佐町渋川には明治三十九年(一九〇六)、日露戦争の終結を記念して建てられたレンガ造りの凱旋門(凱旋紀念門、国登録有形文化財)があります。日本で造られた凱旋門の多くは仮設のもので、レンガ造りや石造りのものはまれでした。渋川の事例は、日本に残る唯一のレンガ造りの凱旋門です。扁額(へんがく)(門戸などに掲げる看板)が掲げられた壁面には、同じ段で長い面と短い面を交互に並べて積み上げる「フランス積み」が用いられています。
東海道線は明治二十二年(一八八九)に全通。その後、大正二年(一九一三)には複線開通しました。東区材木町の「まるがた通路」や安間川にかかる現役の橋脚にはこの時に造られたレンガ造りの構造物がみられます。東海道線はイギリスの技術や規格を導入して敷設されました。レンガ造りの橋脚は、一つの段はレンガの長い面を並べ、次の段では短い面を積むというように交互に積み上げる「イギリス積み」で構築されています。
こうしたレンガ造りの建造物には、当時先進的であった国々の技術や文化を取り入れた経緯とともに、日本列島の気候や美意識、瓦をはじめとした既存の建築素材との融合など、日本の近代化への歩みをうかがい知ることができます。市内には、まだ多くのレンガ造りの構造物が残っています。レンガの積み方で歴史をしのぶのも一興ですね。
(文:浜松市文化財課)

◆春野歴史民俗資料館特別企画展(入館料無料)
赤レンガの記憶〜春野と王子製紙気田工場のあゆみ〜
内容:明治22年に操業を開始した王子製紙気田工場の歴史を、およそ70点の写真や模型などを用いて紹介。
渋沢栄一が気田村長に宛てた書簡も展示
期間:令和4年1月30日(日)まで(開館時間9:00〜17:30)
【市HP】「春野歴史民俗資料館」で検索
特別企画展の情報はホームページにも掲載しています

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