■第5話 建造物をバラバラに
文化財に指定されることもある日本の伝統建築。その主要部材は木材で、屋根は植物性材料であることも多いことから、風雨にさらされ劣化します。このため、木造文化財建造物は定期的に修理を施して未来につないでいきます。修理の方法は状況に応じてさまざま。傷みなどの程度に合わせ、屋根の葺(ふ)き替えや半解体、全解体といった工事の方針を定めます。
二〇一九年、天竜区春野町領家にある秋葉神社神門(市指定有形文化財、江戸時代)の修理が検討されました。この時に確認された神門の傷みは深刻でした。雨や湿気による柱の腐朽、風などの強い力を受けたことによる部材の折れ、屋根の破損に加え、建物全体もねじれているというフルコースに近い症状。このため、神門の修理には全解体する方針が採られました。工事は二〇二〇年に始まり、二〇二一年現在も進行中です。
全解体では、柱や梁(はり)など、全ての部材をバラバラにします。壮大な神門はいったん地上から姿を消しました。その後、倉庫で部材を点検し、再利用できる部材や未来の修理の参考になる保存部材を確認しました。
解体すると外から見ただけでは分からない傷みの詳しい状況が判明したり、過去の修理の痕跡が発見されたりすることもあります。これらを踏まえ、最善の修理方法を探っていくのです。
保存修理の基本は、当初の部材を可能な限り残すこと。傷みがある箇所のみを新しい部材に取り替えます。木造建造物の修理でよく採り入れられる方法に「根継ぎ」があります。腐朽が進んだ柱の根元だけを新材で継ぐこの方法を今回も実施しました。
部材の組み上げは二〇二一年七月から始まっており、神門は再び姿を取り戻しつつあります。竣工予定は二〇二二年度。修理を経た姿にぜひ、ご期待ください。
(文:浜松市文化財課)
▼秋葉神社神門の修理過程を紹介する見学会を11月21日(日)に行います。詳細はお知らせ広報紙17ページへ。
見学会の情報はホームページにも掲載しています
【市HP】「秋葉神社神門」で検索
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