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【特集】発見から70年伊場遺跡が伝えるいにしえの故郷(ふるさと)・2

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静岡県浜松市

■伊場遺跡のその他出土品
遺跡からは、古代文字資料の他に、さまざまな時代の資料が出土しました。その一部を紹介します。

○陶馬(すえうま)
陶馬は、馬の形をした焼き物で、神様の乗り物としてささげられたものと考えられています。鞍(くら)や手綱など馬に乗るための道具が細部まで写実的に再現されています。
馬が当時の人々にとって身近な存在であったことがうかがえます。
*伊場遺跡群出土・陶馬・浜松市博物館所蔵(奈良時代)

○弥生時代の鰭付(ひれつき)土器・短甲(たんこう)
70年前、最初に発見された土器の一つが「鰭付土器」でした。下部の最も太い部分に水平方向のひれが、上部には放射状に四方向のひれが付けられた大変珍しい形です。
短甲とは、木のよろいで、発見当時に国内最古として注目を浴びました。胸当てと背当ての破片が見つかっており、実用品ではなく、儀式用だった可能性もあると考えられています。
◆伊場遺跡出土・短甲・浜松市博物館所蔵(弥生時代)
◆伊場遺跡出土・鰭付土器・浜松市博物館所蔵(弥生時代)

○都から伝わった造形─軒丸瓦(のきまるがわら)
古代、藤原京や平城京などの都では、天皇が政務を執る場所を中心に、立派な瓦ぶき屋根を持つ役所が並んでいました。
一方、地方では、役所や寺院といった瓦ぶき屋根を持つ建物は珍しく、このような数少ない建物は、目を引く存在でした。屋根瓦の縁はハスの花や唐草などの模様で飾られていました。こうした造形も、道を通じて都から地方へ浸透していったものです。
*平城宮跡出土・軒丸瓦・奈良文化財研究所蔵(奈良時代)
瓦にはハスの花の模様が施されていました。
*伊場遺跡群出土・軒丸瓦・浜松市博物館蔵(奈良時代)

○いにしえの役人の持ち物
役所跡からは、役人の持ち物も出土しています。木簡に書いた文字を削って消すために使われた刀子(とうす)や、すずり、墨をする時に水を差すために使われた水滴(すいてき)など、文字を書く道具が発見されました。
また、唐から輸入された焼き物である唐三彩(とうさんさい)の陶枕(とうちん)(字を書く時の腕枕)などの特殊な遺物も出土しています。すなわち、このような高価なものを所有できる地方の有力な豪族が、当時の役人を担っていたことを裏付けています。
*伊場遺跡群出土 いにしえの役人の持ち物・浜松市博物館蔵(奈良時代)

伊場遺跡からは、多くの貴重な資料が出土しており、これらは古代における都以外の地方の姿と、私たちの住む浜松の長い歴史を伝えています。
古くから東西交通の要所であった浜松。その歴史を物語る伊場遺跡をはじめとする地域の歴史・文化遺産を、これからも大切にし、次の世代へと守り伝えていきましょう。

*印:「古代東海道駅伝展」で展示中です
◆印:常設展で展示中です(短甲は復元品)

■コラム:「浜松」の名の起源
「浜松」という地名は、10世紀半ばに編さんされた漢和辞典「倭名類聚抄(わみょうるいじゅうしょう)」に登場しますが、その起源については、はっきり分かっていませんでした。しかし、伊場遺跡から発見された木簡に「浜津」と記したものが2例あり、「浜津」が「浜松」という地名の起源であると考えられるようになりました。
「津」という文字は、港や渡し場を示すことから、浜松が古くから、水上交通を利用した物資交流の地であったことが分かります。

■お出掛け情報〜古代のロマンを訪ねてみませんか〜

○伊場遺跡公園
伊場遺跡の一部が公園になっています。細長い園内には往復1kmの散歩道があり、弥生時代にムラを守っていた堀や、奈良・平安時代の建物(復元)などが並んでいます。古代の景色を想像しながら歩いてみてはいかがですか。
中区東伊場二丁目22-1
(駐車場あり)
※常時開園

○万葉の森公園
「万葉集」とそのゆかりの草花に親しめる公園です。現在の元号「令和」の出典として注目された万葉集には、伊場遺跡に古代の役所があった頃に詠まれた歌が収められています。
浜北区平口5051-1
問合せ:【電話】586-8700
※資料館は午前9時から午後5時まで
※月曜休館(祝日の場合は翌日)、公園は常時開園

○博物館
伊場遺跡発見70年、博物館開館40年記念 博物館の特別展「古代東海道駅伝展」
伊場遺跡の他、東海道諸国や古都からの発掘出土品などを紹介。1300年前のこの地域の姿、他の地域との交流などを探っていきます。
会期:11月24日(日)まで開催中
※11月5日(火)・11日(月)・18日(月)は休館
費用:一般500円、高校生200円、中学生以下無料。各種障害者手帳所持者および介添え1人、70歳以上は半額。
※常設展も合わせて観覧できます。
場所:博物館(中区蜆塚四丁目22-1[蜆塚公園内])

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